設計事務所で家を建てるということ

「建築士」の資格ってどんな資格?

設計「建築士」の資格には三種類あります。
「一級建築士」「二級建築士」「木造建築士」です。
資格の種類によって、設計や工事監理に携わることができる「用途」や「構造規模」が違ってきます。

木造の建築物(特殊建築物(*1)を除く)を新築する場合に、100m²(約30坪)までは誰でも設計や工事監理をすることができますが、100m²を超えると木造建築士などの有資格者でないと設計・工事監理は出来ません。

木造建築士の場合は、その中でも平屋か二階建ての300m²(約90坪)までとなっています。
二級建築士は、二階建て以上の場合は1000m²(約302坪)まで可能ですが、高さが13mか軒の高さが9mまでと高さによる制限があります。

一級建築士の場合は、面積や規模による制限はありません。
また、上記のほかに、特殊建築物で500m²を超える場合や鉄骨造や鉄筋コンクリート造などで300m²を超える場合などは、一級建築士でなければ設計・工事監理をすることはできません。

よって、木造建築士や二級建築士の場合は、ある一定規模以下の建物でなければ設計・工事監理ができませんが、一級建築士の場合はその制限が無く、全ての建物の設計・工事監理に携わることができます。

また、一級建築士は国土交通大臣の免許による国家資格で、その他は都道府県知事による免許となっています。
法の上では、それ位に一級建築士と他の建築士とは責任や知識・技術力に差がつけられています。
なお、最近の一級建築士試験の合格率は12%程度で、国家資格の中では「難関」の類に入るものです。

和楽舎設計工房は、一級建築士事務所ですので木造住宅は勿論のこと、鉄骨造や鉄筋コンクリート造などの全ての構造や全ての用途の建物の設計に携わることができる資格を有しています。

*1:特殊建築物・・・学校、病院、劇場、映画館、観覧場、公会堂、集会場又は百貨店

「設計」・「工事監理」ってどういうこと?

設計「設計」や「工事監理」とは、どのようなものなのでしょうか?

建築士法で「設計」とは、「その者の責任において設計図書を作成すること」となっています。
これは、建物を造る際に必要な設計図や仕様書を作成することです。

次に「工事監理」です。
建築士法では、「その者の責任において、工事を設計図書と照合し、それが設計図書のとおりに実施されているかいないかを確認すること」となっています。

これは、建物を造る時に施工者(業者)は設計図を基に工事を行いますが、その施工が設計図のとお りにできているかを建築士が照合しなくてはいけないと法律で定められています。

そのため、「建築士」の資格があるからといって二級建築士では工事監理を行うことができない規模の建物もあります。
当然の事ですが、一級建築士は設計同様すべての物件に対して工事監理を行うことができます。

一般の方は知らないと思いますが、一定規模以上の工事を行う場合、「建築主の方は『工事監理者』を定めなければならない」と建築基準法で定められています。

ですから、工事を始める前に役所等へ提出する「建築確認申請」という書類の中には「設計者」の他に「工事監理者」を記載する欄も設定されているのです。

では、この「工事監理者」は、誰が行うのか?
資格上は、その建物の規模に見合った資格を有する「建築士」であればよいことになっています。

その建物を「設計」した「建築士」(設計者)であれば当然、問題はありませんが、その他にもできる人はいます。

その一つは、「第三者監理」と呼ばれるもので、その建物を設計した「設計者」でもなく「施工者」でもない「第三者」に依る「工事監理」です。
当然、その建物の構造規模に見合った建築士の資格を有する必要があります。

国土交通省や官公庁発注による「工事監理」業務では、この方式の採用が増えています。
しかし、設計図を作成していない建築士が工事監理をする場合、一から設計図を読み込まなければならないので、設計と工事監理を一括で行う場合と比べると労力と費用に関してロスが発生します。

また、その設計図がなぜそのように設計されているのかの設計意図を設計図のみから読み解くことも困難です。
そのため、民間の業務では「設計者」が「工事監理」を行うことが一般的です。

もう一つは、建物を施工する施工会社に籍を置く「建築士」に依る「工事監理」です。
建物の規模に見合う「建築士」の資格を有していて、その施工会社が「建築士事務所登録」をしていれば、「工事監理」を行うことは可能です。
そして、その「工事監理者」は、その工事を担当する「現場監督」であっても他の部署の建築士であっても制度上は問題ありません。

では、「工事監理」の本来の目的を考えるとどの様な立場の人が最適なのでしょう?

「工事監理」とは、前述の通り「工事を設計図書と照合し、それが設計図書のとおりに実施されているかいないかを確認すること」です。

施工会社の「現場監督」さんでもよいのですが、自分ではない他の建築士が設計した場合、その設計図の内容を確認するということは、設計図の内容全てを把握することは当然のこと、工事を行うための施工者による視点だけではなく、設計者による視点による確認も必要となります。

法令上の確認事項は当然で、設計時の発注者との打合せによる内容についても、打合せに同席していなくても、設計図から読み説いた上で工事が設計図通りであるかの確認をすることが必要となってきます。

また、「現場監督」と「工事監理者」が同一の場合に、「現場監督」として施工した部分が故意でなくとも間違えてしまい、気が付かないとしたらどうなるかということです。
その場合は、「工事監理者」としてもその間違いに気づいていないわけですから、当然そのまま完成し引渡しとなってしまいます。
例えば、設計者が2.5mの吹抜けをイメージして設計図を描いたにもかかわらず、現場監督は数字を読み違え2.2mで施工をしてしまったとします。
「現場監督」が「工事監理者」の場合は他に確認する人がいなくそのままとなってしまいます。しかし、設計者が工事監理をしていれば、実際に出来た吹抜けが設計時のイメージと違うことに気が付くので間違いを発見することができるのです。

では、このようなことが、もし故意に行われたらどうなるか想像してみてください。
建築主(お施主さん)のほとんどの方は、何十枚(場合によっては百枚を超えることも)とある設計図の全てを把握している方はいなく、建築主自らがその確認を行うことは困難です。

また、建築士法では「工事監理を行う場合において、工事が設計図書のとおりに実施されていないと認めるときには、直ちに、工事施工者に注意を与え、工事施工者がこれに従わないときは、その旨を建築主に報告しなければならない。」とあります。

この様に、法令上も「工事監理者」と「施工者」は別の者であることを前提に定められています。

建築主に代わり、「工事が設計図とおりに実施されているかを確認すること」が「工事監理」なので、やはりそこは設計図を作成した「設計者」が「施工者」と違う視点で「工事監理」を行うことが最適なのだと考えます。

「建築士事務所」について

一般的に社会では「設計事務所」と呼ばれていますが、建築士法で正式には「建築士事務所」となっ ています。

では、「建築士」と「建築士事務所」はどのような関係なのでしょうか。
「建築士」は個人資格です。個人が「一級建築士」や「二級建築士」の資格を有している、ということです。

では、「建築士」の資格さえあれば「設計」や「工事監理」の業務ができるのか?といえば、実はNOなんです。

建築士法上では、「他人の求めに応じ報酬を得て」設計や工事監理などを業として行うときは、『建築士事務所』として都道府県知事の登録を受けなければならない」となっています。

そのため、「設計」や「工事監理」、その他の設計に関する業務は、登録した「建築士事務所」でなければできないことになっています。

また、「建築士事務所」もその「建築士事務所を管理する建築士(管理建築士)」の資格に応じて、「一級建築士事務所」「二級建築士事務所」「木造建築士事務所」と区分され登録されています。

よって、「木造建築士事務所」では、「木建築士」が設計・工事監理できる規模の建物しか扱うことはできませんし、「二級建築士事務所」でも同様です。

「木造建築士事務所」や「二級建築士事務所」では業務として扱える規模が限られているので、「建築士事務所」として専業で営んでいる「建築士事務所」のほとんどが「一級建築士事務所」登録となっています。

時々、施工業者さんで「○○工務店 二級建築士事務所」という看板を見かけることがありますが、これは、工務店の中に二級建築士の資格を持った方がいて、その方が「管理建築士」となり「建築士事務所」登録をしているということです。

その場合は、施工業者であっても、その資格の範囲内で「設計」「工事監理」ができるということになります。

以前は、社内で設計を行い役所等への申請書の作成まで行っていた施工業者さんも多くありましたが、昨今の建築法令の複雑化と申請手続きの煩雑化により、施工業の傍らで設計の作業を行うことが難しくなり、外部の建築士事務所へ委託する施工者さんも増えているとの話も聞いています。

建築士事務所は、いくつかの種類に分けられます。
「意匠設計事務所」や「統括の設計事務所」と言われる、建築主さんから設計業務全体を受注し取りまとめる建築士事務所の他に、構造専門の設計事務所や設備専門の事務所など、技術の高度化と共に専門化も進んでいます。

和楽舎設計工房はいわゆる「意匠設計事務所」です。
意匠とはデザインのことで、構造専門や設備専門の事務所ではなく建物のトータルデザインを行うと共に設計業務全体を統括する役割りを担っています。
木造住宅などは、事務所内で全ての作業を行います。
ほかにも鉄骨造や鉄筋コンクリート造などの構造計算が必要な場合には、構造の専門家に依頼し、高度な設備設計が必要な場合には、設備の専門家と共に業務を取りまとめる形をとっております。
そのため、様々な種類の建物のご依頼にも対応が可能となっています。